第5章:祓詞

もくじ

祓詞とは

「祓詞(はらえことば)」は数ある祝詞の中でも最も基本的なものです。

そしてとても大切な祝詞の一つです。

神社の参拝によく行かれている方なら神主さんが最初に唱えているのを聞いたことがあるかもしれません。

この祝詞の主な役割はその名の通り祓い清めることです。

例えば神社にお参りする前に唱えます。

自分自身についている目に見えない穢れや罪を祓い清めるのです。

そして清々しい気持ちで神様の前に進むために唱えます。

また毎日の習慣として唱えることもできます。

朝起きた時や夜寝る前。

何か新しいことを始める前などです。

そうすることで心をリセットし気持ちを整えることができます。

  • ちょっと心がモヤモヤする時

  • なんとなく気分が晴れない時

  • ネガティブな気持ちにとらわれている時

そんな時に唱えると心がスッと軽くなるかもしれません。

さらに自宅や職場など空間の空気を清めたい時にもおすすめ。

祓詞の内容は日本の神話に基づいています。

伊邪那岐大神という神様が行った禊祓です。

伊邪那岐大神は亡くなった妻を追って黄泉の国へ行きました。

そこは死者の世界です。

そしてそこで穢れを受けてしまいます。

地上に戻ってきた大神はその穢れを洗い流すために川で体を清めました。

これを「禊祓(みそぎはらえ)」と言います。

この禊祓を行った時に神様が生まれました。

祓戸大神(はらえどのおおかみ)と呼ばれる祓い清めを専門とする神様たちです。

ですから祓詞はこの伊邪那岐大神の禊祓の物語をふまえているのです。

「どうか私たちについている罪や穢れも祓戸大神たちのお力で祓い清めてください」

そうお願いする内容になっているのです。

この祝詞を唱えることで心身がリフレッシュされます。

そして罪穢れが祓われることで心や体が軽くなり、スッキリとした感覚を得られます。

気持ちの切り替えにもなります。

モヤモヤした気持ちやネガティブな思考がリセットされるでしょう。

そして前向きな気持ちに。

さらに清らかな状態で神様に向き合うことで祈りが届きやすくなるのです。

唱える上で大切なのは心を込めて丁寧に唱えることです。

神様への敬意と感謝の気持ちを持ちましょう。

そして「祓い清めてください」という素直な気持ちで臨みましょう。

一音一音を大切に落ち着いた声で唱えることを心がけてください。

祓詞は祝詞の世界への入り口として最適。

短く覚えやすい祝詞なのです。

初心者の方も難しく考えずにまずは声に出して唱えてみてください。

きっとその清々しい響きを感じるはずです。

そして心が洗われるような感覚を体験できるはず。

毎日の習慣に取り入れてみてはいかがでしょうか。

清らかな気持ちで日々を過ごす助けになるでしょう。

祓詞の全文

掛けまくも畏き伊邪那岐大神
かけまくもかしこきいざなぎのおおかみ

筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に
つくしのひむかのたちばなのおどのあわぎはらに

御禊祓へ給ひし時に生り坐せる祓戸の大神等
みそぎはらへたまいしときになりませるはらえどのおおかみたち

諸諸の禍事罪穢有らむをば
もろもろのまがごとつみけがれあらむをば

祓へ給ひ清め給へと白す事を聞こし食せと恐み恐みも白す
はらえたまいきよめたまえともうすことをきこしめせとかしこみかしこみももうす

祓詞はこちらからもダウンロードできます。

祓詞の意味

祓詞は私たちの心身や場を清めるための基本的な祝詞です。

その短い言葉の中には深い意味と祈りが込められています。

この祝詞は日本の神話における重要な出来事を根拠としています。

それは伊邪那岐大神が行った「禊祓」です。

伊邪那岐大神は死者の世界の黄泉の国から戻ってきました。

その際に身についた穢れを洗い流すために川で身を清められました。

この清めの行為が日本の「祓い(はらい)」の原型とされているのです。

祓詞はまず伊邪那岐大神の名前を呼びかけることから始まります。

「掛けまくも畏(かけまくもかしこ)き 伊邪那岐大神(いざなぎのおほかみ)」と。

その禊祓を行った神様です。

深い敬意を込めて呼びかけるのです。

「掛けまくも畏き」とは「口に出して申し上げるのも畏れ多いほど尊い」という意味です。

神様に対する最大の敬意を表す言葉。

次に「筑紫(つくし)の日向(ひむか)の橘(たちばな)の小戸(おど)の阿波岐原(あはぎはら)に 禊ぎ祓へ給ひし時に 生(な)り坐(ま)せる」と続きます。

これは伊邪那岐大神が禊祓を行ったとされる場所を示しています。

その場所は阿波岐原(現在の宮崎県)です。

禊祓を行うと神様が次々と誕生します。

その中で祓いを司る神様こそが「祓戸大神(はらえどのおおかみ)」です。

この神様は伊邪那岐大神が洗い流した穢れから生まれました。

そしてその名の通り「祓い清め」を専門とする力を持っています。

一般的に次の四柱の神様を祓戸大神と呼びます。

  • 瀬織津比売(せおりつひめ)

  • 速開都比売(はやあきつひめ)

  • 気吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)

  • 速佐須良比売(はやさすらひめ)

しかし祓詞ではより広く祓いを司る神様全体を指しているとも考えられます。

そして祓戸大神に対して祓っていただきたいものを具体的に述べます。

「諸々(もろもろ)の禍事(まがごと) 罪(つみ) 穢(けがれ)あらむをば」という部分です。

  • 「諸々」はありとあらゆる

  • 「禍事」は災いや不幸なこと

  • 「罪」は過ちや不調和

  • 「穢れ」は心身の不浄やネガティブな状態

祓詞は私たちの心身や場を清めるための基本的な祝詞。

これらの好ましくないものがあるならばそれらをどうか祓ってくださいと神様にお願いするのです。

その具体的な願いが言葉に込められています。

「祓へ給(たま)ひ 清め給(たま)へと 白(もう)すことを」という言葉です。

「祓ってください清めてください」と祓戸大神に直接お願いしているのです。

「白す(もうす)」は神様に対してへりくだって申し上げる気持ちを表しています。

最後に「聞(き)こし食(め)せと 恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(もう)す」と結びます。

「聞こし食せ」は丁寧な祈りの言葉です。

「どうぞお聞き届けください」「お受け入れください」という意味です。

私たちの祓い清めのお願いを神様が聞き入れてくださるようにと願っています。

そして「恐み恐みも白す」は改めて深い畏敬の念を示して祝詞を終えます。

「畏れ多く存じながら謹んで申し上げます」と。

つまり祓詞全体としては浄化への切なる願いが込められた祈りの言葉なのです。

口にするのも畏れ多い伊邪那岐大神様が禊祓をなさった時にお生まれになった神様。
祓いを司る祓戸大神様たち。
どうか私たちについているかもしれない様々な禍事・罪・穢れを祓ってください。


清めてくださいと申し上げるこの祈りをどうぞお聞き届けください。
畏れ多く存じながら謹んで申し上げます。

神様への深い敬意も込められています。

この短い祝詞の中に神話の世界観と祓い清めの本質そして祈りの心が凝縮されているのです。

祓詞を唱えるポイント

祓詞を唱えるにあたり大切な心得がいくつかあります。

その清めの力をより深く感じ神様との繋がりを育むためです。

まず何よりも全ての祝詞の基本。

それは敬意と感謝の心を第一に持つことです。

祓詞の由来となった伊邪那岐大神。

私たちの罪穢れを祓ってくださる祓戸大神への深い敬意。

そして日々の恵みへの感謝の気持ちが祈りの核となります。

次に「祓い清める」という意図を明確に持つことも重要です。

なぜ祓詞を唱えるのでしょうか。

「心のモヤモヤを祓いたい」
「場を清めたい」
「清らかな心で神様に向き合いたい」

といった目的意識を持つことで祝詞の力がより効果的に働くのです。

そして言葉の意味を理解して心を込めて唱えましょう。

伊邪那岐大神の禊祓の物語。

祓戸大神に浄化をお願いしているという内容を心に留めます。

一語一語を大切に発声することが深い祈りに繋がります。

声の出し方としては落ち着いた穏やかな声で丁寧に唱えるのが一般的です。

早口にならず一つ一つの音を大切にしましょう。

神様に語りかけるような気持ちで臨みましょう。

心地よく敬意を表せる声量で十分です。

また姿勢と呼吸を整えることも大切です。

唱える前に背筋を軽く伸ばし肩の力を抜きます。

そしてゆっくりと深呼吸をして心を落ち着かせます。

穏やかな呼吸は穏やかな祈りの基盤となるのです。

場所とタイミングを選ぶことも可能であれば意識したい点です。

神棚の前や清潔で静かな場所が理想的です。

神社の参拝前や一日の始まりや終わり。

何かを始める前などが適しています。

日常的に行うなら決まった時間にするのが良いでしょう。

完璧に暗唱できなくても大丈夫です。

間違えても構いません。

大切なのは上手下手ではありません。

心を込めて真摯に唱えようとする姿勢です。

これらの点を心に留めて祓詞に向き合うこと。

そうすればそれは意義深い時間となるでしょう。

自らの内面と向き合い心と場を深く清めます。

そして神様との清らかな繋がりを育むのです。

祓詞の効果

祓詞を唱えることによって様々な良い効果が期待できます。

まず最も基本的な効果は心身やその場の「祓い清め」です。

浄化の効果が挙げられます。

日々の生活で知らず知らずのうちに溜まった心のモヤモヤやネガティブな気持ち。

なんとなく感じる重たい空気。

それらを祓詞の言葉の力でスッキリと洗い流してくれるのです。

これにより心が軽やかになりリフレッシュされた感覚を得ることができるでしょう。

また心が清められることで精神的な安定を取り戻します。

そして穏やかな気持ちになる手助けとなります。

不安や焦りといった感情が和らぎ落ち着きを得やすくなるかもしれません。

さらに祓詞は気持ちの切り替えにも役立ちます。

何か新しいことを始める前や気分を一新したい時に唱えます。

そうすることで過去のエネルギーを引きずらずフレッシュな状態で臨むことができるでしょう。

神様への祈りという点では自らを清めてから神様に向き合うことが大切です。

そうすることでより素直な気持ちで祈りを捧げることができます。

そしてその想いが神様に届きやすくなるとも考えられています。

さらに祓詞を唱える場の空気も浄化されると言われています。

自宅や職場など空間のエネルギーを整える効果も期待できるのです。

清々しい状態を保つことができます。

このように祓詞はシンプルでありながらも力強い助けとなる祝詞です。

心と体そして環境を清浄に保つためのものです。

祓詞を唱えることによって様々な良い効果が期待できます。

ワーク

第4章では最も基本的でありながら非常に大切な「祓詞」について学びました。

この祝詞には私たちの心身や場を祓い清める大きな力が秘められています。

このワークは祓詞の背景にある神話や意味を深く理解し、その清々しいエネルギーをあなたの日常に取り入れ、体感していくためのものです。

祓詞の力を最大限に引き出すためにはその背景にある物語と意味を理解することが大切です。

伊邪那岐大神の禊祓:伊邪那岐大神が黄泉の国から戻り、穢れを洗い流すために「筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原」で禊祓を行った場面を想像してみてください。
この禊祓の行為からあなたは「清めること」の重要性についてどのようなことを感じますか?
伊邪那岐大神が禊祓を行った際に「祓戸大神」が生まれたという神話は私たちに何を伝えていると思いますか?

祓戸大神への願い:あなたが祓詞を唱える時、「祓戸大神」に対して具体的にどのような「禍事・罪・穢れ」を祓い清めてほしいと願いますか?
今、あなたが最も手放したいと感じているものを3つまで書き出してみましょう。(個人的な悩み、ネガティブな感情、場の淀みなど、何でも構いません)

祓詞を効果的に唱えるためには心構えと準備が大切です。

敬意と感謝、そして意図:祓詞を唱える前にどのような「敬意」と「感謝」の気持ちを心に持ちたいですか?
また祓詞を唱えることで達成したい「意図」は何ですか?

声・姿勢・呼吸:祓詞を唱える際の理想的な「声の出し方(トーン、速さ)」「姿勢」「呼吸」についてあなた自身が心地よく、かつ敬意を表せる状態をイメージして書き出してください。

場所とタイミング:あなたが日常的に祓詞を唱えるとしたらどのような「場所」でどのような「タイミング」で唱えたいですか?
その理由も教えてください。

実際に祓詞を唱え、その効果を感じ、日常に取り入れていきましょう。

祓詞の奏上と感覚の記録:静かな場所でステップ2でイメージした声・姿勢・呼吸を意識しながら祓詞を心を込めてゆっくりと3回唱えてみましょう。
テキストを見ながらで大丈夫です。


唱え終えた後、あなたの心、身体、そして周囲の空間にどのような変化や感覚がありましたか?

(例:心が軽くなった、頭がスッキリした、空気が清々しくなった、安心感に包まれたなど)具体的に記述してください。

祓詞を日常の「お守り」に:今後、どのような時に祓詞を唱えたいと思いますか?
具体的な場面を3つ挙げ、その際に祓詞にどのような役割を期待するかを書き出してください。

(例:朝起きた時、一日の始まりを清々しくするため。大事な会議の前に、心を落ち着かせ集中するため。人混みから帰宅した後、外で受けたかもしれない穢れを祓うため。)

祓詞習慣化への小さな一歩:祓詞を毎日の習慣にするために今日からできる小さな一歩は何ですか?
(例:枕元に祓詞のテキストを置く、スマホのリマインダーを設定する、まずは3日間だけ続けてみるなど)